年が明けて

 この年末年始はほとんど仕事や事務処理やらで、災害対応も重なって毎日慌ただしく正月気分は味わえませんでした。その間に20歳前後、2000年代生まれの若い世代と話をしていて、現下の衰退し混迷混乱する社会こそ、彼らが知る唯一の「社会」の姿であり、だからとりたてて特段の不安を感じることもないらしいことが分かりました。
 思い出したのは子どものころ繰り返し何度も読んだ、自らの孤児経験を元にした西村滋の小説『お菓子放浪記』(1976年)でした。
 その戦時中の場面に、映画館館主の娘が、開戦前の小津映画の「食べるシーン」の多さに苦言を呈したあと、従業員の主人公シゲルに、こう話しかける下りがあります。

「うちのおやじがいってたよ。いい時代にみんなゼイタクをしすぎたから、いま罰があたっているんだって」
「そうかな?」
「そう思わないの、あんたは」

 衰退と混乱に覆われる前の、秩序の元に世の中が回っていた時代を前提に物を考える私たちは、ひょっとしたら、孤児院や感化院で長くひもじい思いをして育ったシゲル少年が首を傾げながら見ていた、「食べられる時代にたらふく食べて育った」館主の娘のように、若い人たちから見られる時代になってしまったのかも知れません。