「たゞ、玉響の夢」縁起 2

 忘れ去っていたあの話

 二十代の頃、いくつか話のネタを考えたことがありました。その一つが「昔の子どもが今の時代にタイムスリップする」話。今以上に画力も知識も根気もありませんでしたから、形になることもなく忘れ去っていました。
 それから幾星霜を経て、肉親の病気判明と余命宣告で実家に戻り、そして看取った後。長く離れていた此の街の景色は、前世紀で止まっていた私の様々な思い出が、全て過去となったことを思い知らすものとなりました。
まるでタイムスリップしたかのようだ――忘れていたいつかの話を思い出し、改めて話を考え始めたのは、四十九日を過ぎてからのことでした。
 舞台はあの頃、『じゃりン子チエ』を愛読していた名残として、旧西萩町より南の天下茶屋地区にしました。登場する町丁もかの作品に倣い、昭和48年改正以前の旧町名にしています。(橘 思默)